2004年にマガジンハウスから出版された子どもむけのお話です。
今はwebでしか読むことができませんが、10年前に紙芝居を作ったのを思い出しました。
まさに、今の状況であることにびっくりしています。
今日は、この紙芝居のケースを作りました。
ご要望があれば、これを持ってどこへでも出かけます。
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戦争のつくりかた
あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?
おじいさんやおばあさんから、むかしのことを聞いたことがあるかもしれません。学校の先生が、戦争の話をしてくれたかもしれません。
話に聞いたことはなくても、テレビで、戦争している国を見たことなら、あるでしょう。
私たちの国は、60年近くまえに、「戦争しない」と決めました。だからあなたは、戦争のためになにかをしたことがありません。
でも、国のしくみやきまりをすこしずつ変えていけば、戦争しないと決めた国も、戦争できる国になります。
そのあいだには、たとえば、こんなことがおこります。
わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、武器を持ってよその国にでかけるようになります。
世界の平和を守るため、戦争でこまっている人々を助けるため、と言って。
せめられそうだと思ったら、先にこっちからせめる、とも言うようになります。
戦争のことは、ほんの何人かの政府の人たちできめていい、というきまりを作ります。
ほかの人には、「戦争をすることにしたよ」と言います。時間がなければ、あとで。
政府が、戦争するとか、戦争するかもしれない、と決めると、テレビやラジオや新聞は、政府が発表したとおりのことを言うようになります。
政府に都合のわるいことは言わない、というきまりも作ります。
みんなで、ふだんから、戦争のときのための練習をします。
なんかへんだな、と思っても、「どうして?」とは聞けません。
聞けるような感じではありません。
学校では、いい国民は何をしなければならないか、をおそわります。
どんな国やどんな人が悪者か、もおそわります。
町のあちこちに、カメラがつけられます。いい国民ではない人をみつけるために。
わたしたちも、おたがいを見張ります。いい国民ではない人がまわりにいないかと。
だれかのことを、いい国民ではない人かも、と思ったら、おまわりさんに知らせます。
おまわりさんはいい国民ではないかもしれない人をつかまえます。
戦争が起こったり、起こりそうなときには、お店の品物や、あなたの家や土地を、軍隊が自由に使える、というきまりを作ります。
いろんな人が軍隊の仕事を手伝う、というきまりも。
例えば、飛行機のパイロット、お医者さん、看護師さん、トラックの運転手さん、ガソリンスタンドの人、建設会社の人などです。
戦争には、お金がたくさんかかります。
そこで政府は、税金をふやしたり、私たちのくらしのために使うはずのお金をへらしたり、私たちからも借りたりして、お金を集めます。
みかたの国が戦争するときには、お金をあげたりもします。
わたしたちの国の「憲法」は、「戦争しない」と決めています。
「憲法」は、政府がやるべきことと、やってはいけないことを私たちが決めた、国のおおもとのきまりです。
戦争したい人には、つごうのわるいきまりです。
そこで、「わたしたちの国は、戦争に参加できる」と「憲法」を書きかえます。
さあ、これで、わたしたちの国は、戦争できる国になりました。
政府が戦争すると決めたら、あなたは、国のために命を捨てることができます。
政府が、「これは国際貢献だ」と言えば、そのために命をすてることができます。
戦争で人を殺すことができます。
おとうさんやおかあさんや学校のともだちや先生や、近所の人立ひが戦争のために死んでも、悲しむことはありません。
政府はほめてくれます。国や「国際貢献」のために、いいことをしたのですから。
人のいのちが世の中で一番大切だと、今までおそわってきたのは間違いになりました。
一番たいせつなのは、「国」になったのです。
もしあなたが、「そんなのはいやだ」と思ったら、お願いがあります。
ここに書いてあることが、ひとつでもおこっていると気づいたら、おとなたちに、「たいへんだよ、なんとかしようよ」と言ってください。
おとなは、「いそがしい」とか言って、そういうことになかなか気づこうとしませんから。
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著作権:りぼん・ぷろじぇくと・井上ヤスミチ 版権:マガジンハウス
紙芝居絵作成:ケント