駅前の駐輪について考えてみます。
駅前に自転車を止めてはいけない根拠は、条例にあります。伊丹市自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐輪対策の推進に関する条例の第18条に「自転車等の利用者は、放置禁止区域内に自転車等を放置してはならない」とあります。
駅前に自転車を放置するのは、次のような点でよくないから、とされます。
① 歩行者や車いす利用者、ベビーカー利用者の通行を妨げるおそれがあるから
② 街の美観を損なうから
③ 災害が起こったときに、放置自転車が邪魔になって安全な避難路を確保できないから
④ 多額の市税を投入して造った有料駐輪場の利用率が下がるから
⑤ ただで自転車を止めておけるとなると、市バスの利用率が下がるから
駅前に自転車を止めておく人は、おおよそ3パターンに分けることができます
① 阪急やJRを利用するために駅まで自転車で来て、電車に乗って通勤通学する
② 駅前の銀行や商店に買い物に来る
③ 駅前に自転車を止めて、大阪や神戸方面に買い物や食事に出かける
放置時間でみると、①は10時間以上、②は1~2時間、③は、夜なら5~6時間、土日祭日なら10時間以上となるでしょう。
(バス停のすぐ後ろに設置された駐輪キット)
さて、今回の駐輪対策として、阪急駅前に駐輪キットを設置し1時間(ないし2時間)無料としました。この対策で放置することで問題となる現象のどれかが解決されたのでしょうか?昼間の時間帯はきちんとキットに自転車が止まっていました。しかし、通行の安全面や美観の悪化は解決されていません。路上キットの数には限りがありましたから、キットに入りきらない自転車は相変わらず店舗の周辺に止めておかれ、駅ビルと商業ビルの間のくびれている通路では、ベビーカーがやっと通れるくらいまでに、自転車があふれかえっていました。
いままできちんと駐輪場を利用していた人もたくさんいます。駅に買い物に来る人は、自転車利用者だけではありません。バスで来られる人も大勢います。ちゃんとルールを守っている人や放置自転車に困っている人たちにとっては、何もメリットもなかったと思います。逆に、今回に路上キットの設置で、短時間ならば駅前に自転車を止めてもいい、というお墨付きを与えたことになるのではないでしょうか?
マナーを守らない人たちの駐輪指導に年間2000万円、自転車撤去に1000万円程度、合わせて自転車対策に3000万円の市税が使われています。毎年毎年です。10年で3億円です。このお金があれば、他の事業に使えます。
商店街の皆さんは、自転車利用者は大切なお客さんだから、駐輪指導を厳しくすると営業に影響する、とおっしゃる方もいらっしゃると聞きます。市民の方も、買い物にきているのだから、無料でとめて当たり前、忙しい夕方に地下駐輪場に止められない、とおっしゃいます。
石清水八幡宮で有名な八幡市は駅前にロータリーがあります。駐輪場はロータローから反対側300メートルほど離れたところに市営の駐輪場があります。それでも駅前の放置自転車はほとんど見当たりません。
今週末、バルでにぎわう伊丹市、他市からも視察や遠征組のお客さんがたくさん来られます。その時に、駅前に山ほどの放置自転車があったら、どう思われるでしょうか?駅前がきれいな街は、自分の家の玄関がきれいなのと同じように、好感がもてます。
今、自転車で来ている人も、足腰が弱って杖をついてゆっくり歩くようになるかもしれないし、車いすになるかもしれない。若い人も一人子どもの手を引いてベビーカーを押しながら歩くことになるかもしれません。自分に都合のいい事だけを考えていれば、いいまちづくりはできません。市民、商店、鉄道事業者のみなさんが、それぞれできることを持ち寄って、対策を考える場が必要でしょう。ゴミの問題と同じように、市内のいろいろな場所でこの問題について説明をし、市民が互いに話し合って、解決策を考える。時間のかかる方法でしょうが、皆が問題を共有して、納得することができると思います。
伊丹市民は、マナーの悪い市民ではないはずです。