年初に集中した行政視察も、これで最終です。
今、伊丹市で一番大きな課題が、市を今後10年をどう運営していくかの大枠を決める「総合計画」の作成で、今回初めて議会が特別委員会を創って関わっていくことになりました。
総合計画の「基本構想」と呼ばれる、市の将来像について述べた部分は、議会の議決事項であるため、議会が策定にかかわるのは、事前審査にあたるのではないか、という意見がある一方で、市民の代表として選ばれた議会・議員が最終形として出てきた「議案」にしか意見が言えないのでは、十分な審議もできない、とする自治体が増えてきています。議会の関与が深まることは、夕張市の破たんに見られるように、議会のチェック機能が十分に働いていなかったという批判を受けて、計画の段階からしっかりと見て議会の責任を果たしていく決意の表れだと思います。
1日目に視察した、岐阜県多治見市では、総合計画のうち「基本構想」だけでなく、具体的な取り組みを示す「基本計画」も議決事項としています。つまり、具体的な施策も決めて議会に示さなければならないことと、計画に変更があるたびに議会の了承を得なければならないことになります。
視察の途中に飛び入り参加して、市政に対する熱い思いを語ってくれた古川市長。多治見市では、総合計画を10年ではなく市長の任期の4年の倍数である8年とし、計画にも市長のマニフェストが反映されるよう工夫をされています。その一方で、「○○計画」を作ることに時間をかけ過ぎて、それで仕事が終わったようなつもりになるのではなく、計画を作ること、会議をする時間を極力削った、スピード感のある行政を目指している、と話してくださいました。それは、議会に対しても同じこと。議案や計画をぎりぎりまで出さないのではなく、議会とも早めに十分にコンタクトをとって、進めていく、とのことでした。
多治見市のゆるキャラは「うながっぱ」。役所の玄関でお客様をお出迎えし、市のHPに独自のページを持つなど、大活躍とのこと。
翌日は、小牧市を視察。空港がある、自衛隊の基地がある、など、伊丹市と似た点がいくつもありますが、財政力指数(市の豊かさを示す数値で1を超えるほど豊か)が1.5、経常収支比率(毎年の予算に必ず支出される費用、100%に近いほど、財政に余裕がない)が74%という、伊丹市とは似ても似つかないお金持ちの市です。新たな総合計画に、財政的な裏付けをしていない、というお話にも、収入や貯金の額を教えていただいて、納得。今後、市庁舎、図書館、病院を立て替える計画があるそうですが、その半分以上を基金(貯金)としてお持ちだそうです。これも、先の総合計画にきちんと位置付けて貯めてきた結果です。こういう堅実な財政運営が、今の余裕を生んでいるのだなあ、と感心することしきり。
この市の議会の総合計画への関わりは、審議会と議会の特別委員会が連動していたということ。行政は常に議会に、素案や計画案・審議会の内容を報告し、議会は議会としての意見を行政に述べる、そのようなやり取りを1年にわたって続けて最終案にまとめたとのこと。最終的に議会に上程された時も、計画項目200余りを十分な時間をかけて審議したということです。
明日、総合計画検討特別委員協議会で素案についての説明があります。最初の予定では、9月議会に最終案が上程されることになっていましたが、基本構想の素案の段階ですでに5カ月近く遅れています。これから、素案のパブリックコメントを求め、その後、基本計画を作る作業にかかることになりますが、残された時間はあと半年。十分な時間とは思えません。9月は決算議会もありますので、この際、急ぐことなく12月議会での上程を目指して、議会と十分な意見交換ができることを要望したいと思っています。
(小牧市議会の議場。傍聴席が広く、議員席に非常に近い。居眠りや内職をしていると市民の皆さんに見つかってしまうそうです。)