今日、急遽決まった教育基本法の公聴会の傍聴に行ってきました。昨日から冷え込んだ元町海側のホテルオークラ周辺には、教基法に反対するみなさんの集会が行われている横をタクシーで通り過ぎ、ホテルオークラに入りました。傍聴人は60人、政党の国会議員割り当てで数がきまるようで、社民党の議員推薦枠は3名でした。派遣委員会の委員のメンバーは、地元選出議員を優先して、自民党の鴻池・北岡・岸・松村・小野の5人、民主党の水岡・佐藤の2名、公明党の山下、共産党の小林の合計9名。公述人は兵庫県立高等学校連合PTA副会長の太田さん、宝塚造形芸術大学の桂さん、大阪府立箕面東高等学校教諭の森本さん、近畿大学名誉教授の土屋さんの計4人。まず、公述人から意見表明が各15分以内で行われ、そのあと、委員から公述人に質問、答弁の順でおこなわれました。各公述人の意見の要約や以下のとおりでした。
太田さんー公述人に選ばれるまで、基本法も改正案もちゃんと読んだことが無かった。多分みんなこんなもんです。言われている愛国心に関しては、自分の住む郷里や自然を子に残したいという気持ち、それは自然に心の中に芽生えてくるもので、国が愛国心はこれ、と決めて教育の中で学ばせていくものではないはず。改正案は教育の中身についていろいろ細かな規定をしているが、今の問題が改正案の下で問題が解決しなかったら、もっと厳しい法律になるかもしれないと恐れています。もっと時間をかける必要を感じます。
桂さんー震災とサカキバラ事件を原体験として話します。地震のとき学校は避難所になりました。その学校で非難してきた人たちのお世話をしたのは、自分のことを省みず学校に留まってくれた先生方でした。避難所ではトラブルもなく、先生方を見直しました。国や行政がダメになっても現場の先生がいたら何とかなると思う。現行の基本法は憲法と一体となっているので、改正案は基本法以下の諸法律との整合性を何とかしなければなりません。改正案には論議するべき課題がありすぎます。新たな教育課題に対応することとか、在日外国人・在外日本人の教育とか。愛国心もいろいろある。人権としての学習権を基本法でどのように保障するかが大切。国民のコンセンサスを得ることが必要。
森本さんー子どもが変わった、学ぶという意欲が無くなって教育というサービスの受け手になった。親は学校にクレームをもってくる。社会も地域もばらばら。現行の基本法は戦後、近代社会の理想を書いた、今になっては古い。ポスト近代に対応しうるものが必要。そういう点では、改正案には復古主義的なものもあり、さまざまな社会観が混在している。伝統を守るというけれど、農村のような伝統社会を崩しておきながら、教育にだけ伝統を守れというのはおかしい。規範意識にしても、子どもだけでなく、大人が正さなければならない。愛国心表記は、多文化共生教育がやりにくくなる。ただ、義務教育の弾力性と改正案17条には期待している。
土屋さんー仕事がら衆議院の特別委員会の議事録はすべて読んだ。改正の理由がわからない。改正案にあるのは、国家による教育の統制。与党のみの改正案審議ではだめ。内閣全体の課題としての審議での検討が必要。教育への国家介入はないというが、国旗国歌法の東京都のその後をみれば、疑わし限りだ。とにかく、廃案を希望する。
意見表明の後、委員から質問が出ました。
松村委員ーひどい親がいる、親も子どもも変わった。
太田さんー変わった子どももいるけど、そうは変わっていない。ひどい親だって初めからそうだったわけではないはず。それを基本法の改正に求めるのは筋違い。
水岡委員ー教育は100年の計といわれるが、改正後にはどんな影響があると思うか?
桂さんー現場を助けてほしい。現行基本法の下で、現場の先生を信じてください。教育には手間も金も必要です。
土屋さんー逐条審議をやっていない。今の教育問題は改正案でも対応できないと言う意見が衆議院の特別委員会でもあった。この改正案は50年100年先の日本の教育を見据えたものか疑わしい。
水岡委員-内外人平等とは具体的に?
森本さんーアイデンティティが確立できていない子が多い。在日外国人ならなおさら。その子たちのことも考えた教育。
桂さんーブラジル2世3世の犯罪率は高い。子どもたちだって望んで日本に来たわけではない。日本ではブラジルと言われ、ブラジルでは日本と言われ、それは彼らが悪いからではない。日本の国の中で、誰にでも教育の権利が保障されなければならない。
山下委員ー現場から国に望む支援は?
森本さんーニーズの多様性、子どもの多様性に合わせるためには、人手とお金が必要。
桂さんー条件整備と予算措置が必要。
山下委員ー教育の民主化、直接責任はどう制度化したらいいか?
土屋さんー学校は公の性格を持つ。教員は全体の奉仕者、憲法の公務員規定より厳しい。すべての階層の子どもに無差別平等に教育を受ける権利を保証すること。教育委員を保護者が選任する制度もあった。中央教育行政は条件整備のみにとどめるべき。改正は内閣全体(与党だけでない)の審議を経るべき。
小林委員ー国家の介入に歯止めができなくなると思うか?
土屋さんー現行の教育法制定には、戦前の反省の視点に立っていた。現行基本法の検証さえも行わないで、改正しようとするのは、国民に説明責任を果たしていない。
小林委員ーいじめは子どものストレスからくる場合も多い
太田さんー教育の原点は家庭にあるとは理解している。対処できない家庭が増えてきている。もっとゆとりのある家庭になればいいと思う。学校選択制は、中身ではなく、外見で判断される恐れもある。
土屋さんー現行法は個人の価値を尊厳するもの、平和国家の構成員たる教育をめざしている。それは現行憲法と1セット。改正案は改正憲法との整合性で語られているが、憲法が改正されていないので、おかしい。
*****
と以上のような内容でした。傍聴をした限りでは、反対あるいは慎重審議を求める意見でした。国家百年の計の教育ならば、基本法の改正にも時間をかけて欲しい、もっと市民に知らしめて議論してからに、という意見だったと思います。他の公聴会がどのような内容だったかはしれませんが、これに近いものであるとすれば、意見を参議院の審議に生かさなければならないはずです。そうでないなら、公聴会は、『聞いたよ』というだけのアリバイづくりの税金の無駄遣いに過ぎないと思います。タウンミーティングでは、やらせで政府賛成案の賛成案をださせ、開いた公聴会の意見は無視、というならば、国民に対する裏切り行為以外の何者でもありませんよね。
8日に参議院通過のうわさもありますが。廃案に向けて何がなんでも頑張りましょう。