9月議会での最重要議案だった下水道料金の値上げが、先日の本会議で反対5人vs賛成22人の圧倒的賛成多数で可決されました。
この間、下水道料金のことについていろいろと書いてきましたが、委員会でも問題の本質に踏み込んだ質疑が行われなかったことが、とても残念です。
賛成討論に立った2会派の賛成の理由は以下のようなものでした。
1.下水道が市民生活にはなくてはならないものである、安定したサービスが大切
2.料金は18年間値上げされていない
3.(それゆえ?)今の料金では経費がまかなえなくなっている
4.一般会計から5億円の補助を出し、市民の負担軽減に努めたことを評価
5.これまでの下水道使用料は阪神間で最も安く、値上げしても真ん中くらいにとどまる
これが値上げに賛成の理由だとして、市民の皆さんはご理解されるのでしょうか?
1つ目の下水道の必要性は当然のこと、値上げしなかったら廃止できるか?否です。
2つ目の18年間値上げしてこなかった理由は?特別会計の枠の中でどんぶり勘定で会計を管理してきたから。値上げの必要があったのなら、今でなくその時に適宜行うべきだった。それを怠ってきた責任は市にあります。
3つ目の特別会計から企業会計になったとたんに経費がまかなえなくなたこと。なぜ赤字になったのか、それについては全く説明されていない。経費の増?人件費の増?支払い利息の増?使用量の大幅減?ただ、まかなえなくなったから値上げします、では納得できません。
4つ目の一般会計からの補助は、評価できます。だからって値上げしてもいい理由にはなりません。
5つ目の他市より安い理論。下水道料金は施設の減価償却費を総括原価に含みますから、施設の規模に料金が大きく左右されます。伊丹市と宝塚市を比べてみると、面積が違います、下水道管の総延長距離は1割以上違います。伊丹市は25平方キロメートルという小さな市域という逆スケールメリットが働いきますから、料金が安いのは当たりまえです。これで他市より高かったら経営に問題あり、でしょう。
この賛成討論はどなたが書いたものなのか?2者ともとても似通ってました。
それに対して、反対討論は無会派の林議員と共産党の上原議員が行い、それぞれの論点から意見をのべていました。
林議員の反対討論は、
1.現在の使用料は、使用料回収率が90%で収益的収支が赤字なのは理解する。100%までの値上げは仕方ない。
2.収益的収支が赤字を出さないための値上げ幅は平成23年から26年の3年間で約5億円。それに対して、今回の値上げは総額12億円。黒字が出るほどの値上げ幅は理解できない。
3.値上げを放置してきたことによっておこった平成21年22年の赤字を値上げに含むのはおかしい。過去の赤字をこれからの人が払うのは責任の所在としておかしい。一般会計からの補助を4億円とし、今後の収支不足のみをカバーすべき。
4.今回の値上げの最大の問題は、資産維持費を料金に含んだこと。資本の不足を使用料でまかなうのは、筋が違う。下水道料金の総括原価に資産維持費を含むべきではない。
上原議員の反対の理由も同様で、
下水道会計を企業会計にし、目に見えるようにしたことは良、一般会計からの補助も良、と評価。
1.そもそも下水道は都市生活に必要不可欠なインフラ。それを維持していくのは行政の責任。一般会計からの基準外の補助を×としたのは理解できない。
2.使用料で維持管理経費をすべてまかなおうとしている自治体はほぼ皆無。値上げをすると使用料回収率が、107.5%となり、利益があがる。利益を出すのが公営企業の目的ではない。
3.資産維持費を使用料に含むと減価償却費の2重取りになる。過去の負債と将来の負担を現在の市民がかぶるのはおかしい。
というものでした。賛成の意見、反対の意見どちらが理論的でしょうか?
資産維持費という考え方は総務省が示したもので、これからは市民生活に必要な建物のお金は国の補助をあてにしないで自前で用意しなさい、という意味があります。下水道料金にこの考え方を入れている自治体は阪神間にはどこにもありません。今回伊丹市がこの資産維持費を使用料に含んだことで、阪神間における突破口となり、各市に波及していくことが考えられます。もっとも、いつも国の顔色を伺っている伊丹市はすんなりと受け入れました(国から派遣された職員さんのご努力です)が、他市が追随するかはわかりません。今後の動向を見てみたいと思います。
それにしても、私の家では年間5000円程度の値上げとなります。復興増税と相まって、家計に大きな痛手です。