11月22日、政府から伊丹空港と関西空港の統合案が正式に発表されました。
統合案については、関西空港の約1兆3千万円の負債解消のためと、伊丹廃港を視野に入れた上で関空の活性化のために、民間の株式会社に運営を任せると聞かされていました。発表された案は、関空の土地と負債は新会社に引き継がないこと、経営会社は国100%出資で民営化とはいえないことが、これまでの案との大きな違いとなっています。
「国の直轄運営」を望んでいた伊丹市にとっては、国営新会社なら安全・環境面での保証が得られるので、喜ぶべきものだと思います。しかし、地元11市でつくる「11市協」は、「新たな経営者の手足を縛るべきではない」などと、完全な民営化を求めるコメントを出していました。
統合会社が国営ということは、空港のあり方が、空港ニーズとは関係なく国が思うような方向に進められる、ということになるのでしょうね。現状をみれば、便利な伊丹空港のニーズは高く、民間会社ならば伊丹空港廃港を決めることは難しくなりますが、国営会社なら国の方向に沿って伊丹廃港がやりやすくなるのではと思います。
伊丹空港は大阪都心に近く確かに便利です。夜伊丹空港を利用すると、眼下に広がる街の灯りは神戸のルミナリエよりもきれいで、住宅密集地を飛んでいるのだということがわかります。でも、ひとたび事故が起きればこの民家群は大きな被害を受けると思うと、背筋に冷たいものを感じます。また、騒音被害が飛行機の進化によって軽くなったといわれても、昼間は5分に1機の飛行機が大きな音をたてて頭上を飛んでいきます。
海外では、大規模な飛行場は郊外や海上にあるのがほとんどです(世界中の飛行場を調べたわけではないので、私の経験の範囲ですが)。今は事故が起きていないので「空港を活かしたまちづくり」が叫ばれていますが、一たび事故が起きれば廃港の声は一気に高まることは間違いないでしょう。
水害に対しては、100年に1度・200年に1度の洪水に対してダムや川の整備が進められますが、航空機災害には何の対応も取られていません。空のどこでも飛んでいる飛行機ですから、どこの場所も被害にあう可能性はありますが、離着陸時が一番事故が起きやすいことを考えれば、空港を市街地から離すことは取り得る最大の予防策ではないでしょうか。
伊丹と関空の統合だけにとどまっていますが、せっかく作った神戸空港も合わせて、関西3空港で今後の関西における役割を考えていったらどうでしょうか。何よりも住民の安全を第一に考え、そのうえで大きな視野と将来像をしっかり持った統合案に期待したいと思います。